蠍は留守です記

蠍の不在を疑わずに眠る暮らしの記録

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旅とわたし:カリー=ル=ルエ(フランス共和国)

このエントリは『旅とわたし Advent Calendar 2016』の9日目です。

ニースマルセイユと振り返ってきて、南仏を懐かしむのにどうしてもはずせない街がある。カリー=ル=ルエという小さな街。カリー=ル=ルエに立ち寄るきっかけになったのは、コート・ブルー線という鉄道路線に乗りたかったからだった。

私にはほんのすこしだけ乗り鉄の気があるようで、ひっそりとした美しい路線に心惹かれる。先日ニース編でタンドという街に遊びに行ったことに触れたが、あれも山岳鉄道に乗るのが目的だった。旅先の鉄道に乗るのはとっても楽しい。

小さな入江

鉄道は海抜よりもすこし高いところを走っている。鉄道駅から緩急ある坂道をくだると、小さな港町がある。特に行き先を決めて乗ったわけではないが、車窓から見える景色を目の当たりにして、下車しないという選択肢はなかった。

海岸線の起伏や素朴な景観には、不思議な魅力がある。バカンスでの長期滞在にも人気の街なのだそうだ。私は立ち寄らなかったが、カジノもあると聞く。

海岸線の地形の美しさ

大きな観光地でないので、ボートの並ぶ港に人影はすくなかった。それでも、あちこちの人の気配がたくさんあった。レストランやカフェで食事を楽しむ人たち、入り組んだ岩場のほうで釣りをする人たち、水着になって犬と一緒に泳ぐ人たち。

こぶりな港は散策するのにちょうどよく、気候のよさと海の静けさに心が洗われるよう。

港から鉄道と山合いを見上げる

ひとやすみのため岩場によじのぼると、海風が心地いい。気がつくと長い間そこでぼんやりしてしまった。気が済むまでぼんやりしたあとは、すこし散歩をした。舗装された散歩道の横には、海へと下りる階段があったり、小さなトンネルがあったり。

また港のほうに戻ってくると、はしゃいで泳いでいた犬も岩場に上がって物思いにふけっているように見えた。濡れそぼった犬は哲学的に見えるのだなと思い、おかしくなってくすくす笑った。

海で水浴びをしたあと、岩場に佇む犬

海岸線ばかり歩き、にぎやかな通りのほうはあまり歩かなかったのが心残り。もっと中に入ってみればよかったなぁ。あまり本数のない路線なので、滞在の後半はあまり時間がなくなって、渋々帰るという感じになってしまった。

くだったときよりもきつく感じる坂道をえっちら登って、また鉄道駅へと戻る。日が落ちはじめて、照らされる線路に後ろ髪をひかれる思い。線路上をどこまでも歩いていけそうな錯覚に陥るくらい、絵になる時間帯だった。

カリー=ル=ルエ駅から見た線路

カリー=ル=ルエを再訪したいのは、もちろん滞在時間がじゅうぶんでなかったことが大きい。もしまた行くことができたら、そのときは何も予定を立てず、2週間くらい滞在したい。何もしなくていい毎日を味わいに行きたい。

コード・ブルー線の車窓を眺めたときのあの気持ちは、きっと2回目でも変わらずうきうきするのだろう。そう、またコード・ブルー線に乗りたい。その欲求があることも否めない。美しい鉄道路線は、何度乗っても飽きるということがない。


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