蠍は留守です記

蠍の不在を疑わずに眠る暮らしの記録

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チベット僧侶の仮面舞踏「チャム」

先日のチベットフェスティバル トウキョウ 2013 のエントリから、仮面舞踏・チャムのことを個別に取り上げたい。はじめて間近で見たチャム、圧倒された。

チャムとは

チャムとは、金剛密教の修行者たちによる密教舞踏。チベットの年末に欠かせない仏教儀式で、修行を積んだ僧侶たちが厄除けと生きとし生けるものの幸せを願い、仮面をつけて踊るのだそうだ。

大晦日の朝、家族揃って身を清めておしゃれをし、バターとお線香とお布施を持って寺院に出かける。そうして家族みんなでチャムを見るのが習わしで、見れば仏の加護を受けられるのだという。

チャム・黒帽の舞の様子

仮面をつけた舞い手がご本尊そのものとなり、読経や楽器の伴奏に合わせて決められたステップを踏む。踊りの所作は厳密に規定されており、ひとつひとつに象徴的な意味が含まれている。色にも重要な意味があり、白い仮面は「息災」、黄色は「増益」、赤は「敬愛」、黒は仏敵を滅ぼす「調伏」を表す。

個人的には、骸骨は神の化身という点が興味深い。骸骨は「生」と「死」が常に隣り合わせであると諭す「無常」の教えの舞踏に登場する。いかに自分を大きく重要人物に見せようとしても、骨以外の何物でもない彼ら。そこにチベット仏教の価値観が表れているのだろう。

今回見ることができたチャム

今回のチベットフェスティバルで見ることができた演目は、法要と祈りを含め以下の通り。

  1. 歓迎の音楽 PHEP-SU
  2. 墓場の主 DUR DAK
  3. 13種のチャム CHAM NA CHUPSUM
  4. 牝鹿と水牛 SHA-MA
  5. 神々の充足 KANGSO
  6. 8男神、勇者の舞 BAG-GYED
  7. 黒帽の舞 SHANAK
  8. 祝福と廻向の祈り SHIJOE

いくつか短い動画を撮ったので、紹介したい。
※しかし、書き出しに失敗して変な比率になってしまった... そこは雰囲気だけでもということで、お許しを。

チャム「8男神、勇者の舞 BAG-GYED」

忿怒尊「ヤマンタカ」の眷属、8勇者の踊り。菩提心を修し、空性を悟りながら舞う僧侶たちの動きは、生きとし生けるものへの慈悲と愛を表現しているのだそうだ。この舞には4つの異なるステップと振りがあるとのこと。本来は2名ずつ舞台に現れ、1つの舞を順番に披露していくものなのだそうだが、この日は全員同時に4種類の舞を踊った。

チャム「黒帽の舞 SHANAK」1/2

最も有名で歴史的な逸話のある舞。11世紀、仏教を排除しようとしていた42代のチベット王ラン・ダルマの元へ、聖者ラロン・ペルギー・ドルジェが白馬を黒く塗り、舞い手の衣装をまとって出向いた。一方の袖には弓を、もう一方には矢を隠し持ち、武闘が進む中で王を暗殺。川で馬を洗い白馬に戻し、黒マントを裏返して白いマント姿で逃げ切ったのだという。

チャム「黒帽の舞 SHANAK」2/2

黒帽の舞の舞い手たちの頭上には「無常」を示す頭蓋骨、手には悪を滅ぼす金剛が握られている。悪や目に見えない障害を調伏する舞だと言われている。

いつか、チベットで、チャムを見てみたい

チャムについて軽く検索してみたら、山本高樹さんという写真家のブログを見つけた。シャナク・コレクションでは黒帽の僧侶たちの写真を、チティパティ・コレクションでは骸骨仮面の写真をたくさん見ることができる。鮮やかな色彩と風景のコントラストに惹かれる。

私もいつか生でこの風景を見てみたいなぁ。営み、思い、受け継いできたすべて。いつかきっと行こう、チベット。その時を楽しみに。


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