このエントリは『お茶とわたし Advent Calendar 2015』の12日目です。
お茶は味だけでなく香りも楽しむものだと思う。むしろ最近では、香りを聞く時間がいちばんお茶に集中している気がする。香りを通してお茶と向き合い、ひとくち飲んで心をほどく。
香道では香の香りを嗅ぐことを「聞く」、聞香と表現する。嗅ぐのとは異なり、心の中でその香りをゆっくり味わうという意味がこめられる。
心落ち着けて聞香すると、飲んで味わうだけではない風景が立ち上がる。呼吸の深いところから、知らない風が吹いてくる。私はその時間が好きだ。また、自分の中に香りを通した後で飲むお茶は、より鮮明にみずからのイメージを見せてくれる。それを感じられる瞬間が至福だ。
お茶と深く向き合うということは、自分自身と向き合うのと等しい。時間と共に変化する目の前のひとときをどう感じ、どう捉え、どう味わうか。香りをトリガーにして無になれる瞬間がある。瞑想が流行っている昨今だが、私は同じように聞香をおすすめする。内側から感性が開いていく実感は心地よいものだ。
時折、我が家の猫もお茶の香りを嗅ぎに来る。何を感じるのかは想像もできないし、たぶん何も考えてないのだろうが、猫のぬくもりを膝に感じて飲むお茶はまた格別である。